平成26年9月1日付けで厚生労働省の労働基準局安全衛生部より出された改正労働安全衛生法のQ&A集より一部を抜粋して転載しております。
ここでは、「ストレスチェック制度の創設」と「労働災害を繰り返す企業への対応」について掲載しております。
A1 ストレスチェック制度(ストレスチェックおよび面接指導)は、労働者のストレスの程度を把握することにより、労働者自身のストレスへの気づきを促すとともに、職場改善につなげていく一時予防を主な目的とした制度であり、精神疾患の早期発見を行うことを一義的な目的とした制度ではありません。
このため、ストレスチェックの内容も、あくまで労働者のストレス程度を把握するための内容とする予定であり、精神疾患かどうかを把握する検査内容とすることは想定していません。
A2 ストレスチェック制度では、ストレスチェックの結果は、労働者の同意なく事業者に伝えてはならないこととされており、ストレスチェックの実施者や実施事務に従事した者に対しては守秘義務が課されています。また、ストレスチェックの結果を通知された労働者が面接指導を申し出たことを理由とした不利益な取扱いを禁止する旨の規定が設けられているなど、事業者による不合理な不利益取扱いがなされないような仕組みとしています。さらに、ストレスチェックの結果や、面接指導の結果などを理由として、不合理な不利益取扱いがなされることのないよう、今後、労使や専門家のご意見を聴きつつ、指針等で不合理な不利益取扱いに当たる事例などについてお示しすることを予定しています。
厚生労働省としては、このような制度の内容を周知するとともに、事業者に対して必要な指導を行っていきます。また、ストレスチェック制度の主な目的は、労働者自身のストレスへの気づきを促すとともに、職場改善につなげていく一次予防にあります。労働者の健康確保のためには、労働者が安心してストレスチェックを受けることができる環境を整えることが重要であること等をしっかりと事業者に周知・啓発していき、制度の悪用がなされないよう取り組んでいきたいと考えています。
A3 ストレスチェックの実施が義務とされるのは、従業員数50人以上の事業場とされており、これは、産業医の選任義務が課されている事業場と同じ対象範囲です。
なお、従業員数50人未満の事業場については、当分の間、ストレスチェックの実施が努力義務とされています。
Q4 従業員数50人未満の事業場について努力義務とされているのはなぜですか?
A4 従業員数50人未満の事業場では、産業医の選任義務が課されていないなど体制が整っておらず、かつ、事業場の規模が小さいため、ストレスチェックの結果等の取扱いに当たって、労働者のプライバシーに十分配慮した情報管理等を行うことについて懸念があるため、義務ではなく、努力義務としています。
ただし、従業員数50人未満の事業場であっても、労働者のメンタルヘルス不調を未然に防止することは重要です。厚生労働省としても、そうした事業場でのストレスチェックを含めたメンタルヘルス対策が促進されるよう、周知・啓発を行うとともに、全国に設置している産業保健総合支援センター(下記URL参照)による面接指導の実施体制を整備することなどにより、支援を行っていきたいと考えています。
<産業保健総合支援センター>
http://www.rofuku.go.jp/shisetsu/tabid/578/Default.aspx
A5 法人単位ではなく、事業場ごとの従業員数が50人未満か否かを確認しますので、法人全体で従業員数50人を超える場合であっても、事業場単位でみたときに従業員数が50人未満であれば、義務とはなりません。この考え方は、現行の産業医の選任義務の対象事業場と同様です。
なお、義務とならない小規模事業場の中でも、例えば、大企業の支店などであって、本社による統括管理等により実施体制が十分整っている場合には、そのような事業場についてはストレスチェックを実施していただくことが望ましいと考えています。
Q6 ストレスチェックの対象労働者は、一般健康診断の対象労働者と同じく、常時使用する労働者とする予定です。具体的には、期間の定めのない契約により使用される者(期間の定めのある契約により使用される者の場合は、1年以上使用されることが予定されている者。及び更新により1年以上使用されている者)であって、その者の1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3以上であれば対象労働者となります。
なお、派遣労働者については、一般定期健康診断と同じく、派遣元事業主においてストレスチェックを実施していただくことになります。
A7 労働者にはストレスチェックを受ける義務が課されていないため、これを受けなかった場合に法令に違反することはありませんが、メンタルヘルス不調を未然に防止するためにも、ストレスに気づいていただくことは重要ですので、できるだけ受けていただくことが望ましいと考えています。
A8 労働者にストレスチェックを受ける義務は課されていませんが、労働者のセルフケアを促進していくためにも、労働者が希望するか否かにかかわらず、事業者は、対象となる労働者全員にストレスチェックを受ける機会を提供する必要があります。
A9 ストレスチェックの実施頻度は、今後、労使や専門家のご意見を聴きつつ省令で定めることにしていますが、健康診断と同様に、1年以内ごとに1回以上実施していただくことを想定しています。
A10 医師、保健師以外では、一定の研修を受けた看護師と精神保健福祉士を想定しており、具体的には、今後、労使や専門家のご意見を聴きつつ省令で定めることにしています。
A11 問題ありません。委託により実施する際には、ストレスチェックの結果を実施者から直接労働者に通知する必要があり、労働者の同意なく事業者に通知してはならないことなどの点にご留意ください。
A12 労働者の心理的な負担の程度を把握するため、労働者自身が該当する項目を選択するチェックシート方式で行う検査です。実施方法については、今後労使や専門家の意見も聴きつつ検討を行う予定ですが、面談形式に限定することは想定していません。
A13 ストレスチェックの具体的な項目は、「職業性ストレス簡易調査票」などを参考に、労使や専門家の意見も聴きつつ検討を行い、標準的なものをお示しするとを考えています。
なお、9つのストレスチェック項目は、前回法案において、ストレスチェックのイメージとして例示したものであり、今般の改正法においては、従業員数50人未満の事業場は努力義務とされるなど、前回法案と前提が異なるため、最低限盛り込むべき内容も含め、改めて検討を行うこととしています。
なお、今後の検討スケジュールについては、第1回「ストレスチェック項目等に関する専門検討会」の資料4(下記URL参照)をご参照ください。
<ストレスチェック項目等に関する専門検討会>
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-roudou.html?tid=203931
<ストレスチェック制度に係る今度のスケジュール(案)>
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11201000-Roudoukijunkyoku-Soumuka/0000050911.pdf
A14 A13のとおり、ストレスチェックの具体的な項目は、「職業性ストレス簡易調査票」などを参考に、労使や専門家のご意見も聴きつつ検討を行い、標準的なものをお示しすることを考えています。検討に当たっては、先行して実施している事業者の取組も考慮しつつ、検討を進めていきたいと考えていますが、こちらからお示しする標準的なものを全て含んでいるのであれば、基本的にはこれまでどおり実施していただいて問題ないと考えています。
なお、ストレスチェックの項目として盛り込むことが不適切な内容についても検討を行う予定です。
A15 現在、ストレスを評価するための調査票としては、産業現場で広く活用されている57項目の「職業性ストレス簡易調査票」があります。この調査票は、平成7年から平成11年までの厚生労働省の委託研究により開発されたもので、約1万2千人を対象とした試験的調査により、その信頼性、妥当性が統計学的に確認されているものです。
ストレスチェックの具体的な項目は、今後、この「職業性ストレス簡易調査票」などを基本に、労使や専門家のご意見も聴きつつ検討を行い、標準的な内容をお示しすることを考えています。
また、ストレスチェックを効果的に実施するための手法等について、お示しする予定です。
A16 ストレスチェックと健康診断を同じ機会に併せて実施していただくことは問題ありません。ただし、ストレスチェックの結果については、労働者の同意なく事業者に提供してはならないこととされておりますので、結果については、健康診断と異なる取扱いをしていただく必要がある点にはご留意ください。
A17 一般定期健康診断の問診等において、医師が把握したメンタルヘルス不調に関する健康情報の取扱いは、これまでと変わりません。つまり、「労働者の心の健康の保持増進のための指針」(下記URL参照)にも記載されているように、事業者と産業保健スタッフは、以下に掲げる点に留意した上で、労働者の健康情報を取り扱う必要があります。
@産業医等が、相談窓口や面接指導等により知り得た健康情報を含む労働者の個人情報を事業者等に提供する場合には、提供する情報の範囲と提供先を必要最小限とすること。その一方で、産業医等は、当該労働者の健康を確保するための就業上の措置を実施するために必要な情報が的確に伝達されるように、集約・整理・解釈するなど適切に加工した上で提供すること。
A事業者は、メンタルヘルスに関する労働者の個人情報を取り扱う際に、診断名や検査値等の生データの取扱いについては、産業医や保健師等に行わせることが望ましいこと。特に、誤解や偏見を生じるおそれのある精神障害を示す病名に関する情報は、慎重に取り扱うことが必要であること。
<労働者の心の健康の保持増進のための指針>
http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/anzen/dl/101004-3.pdf
A18 可能であり、適切な事後措置や職場環境の改善につなげるためにも、産業医が実施することがむしろ望ましいと考えています。ただし、ストレスチェック制度では、ストレスチェックを実施した医師等は、労働者の同意なく、その結果を事業者に提供してはならないこととされています。産業医がストレスチェックを実施した場合も同様に、労働者の同意なく事業者にその結果を伝えてはならないこととなりますので、ご留意ください。
A19 産業医がストレスチェックの企画・評価にかかわり、実施者となる場合には問題ありませんが、産業医が実施者とならない場合には、その産業医に労働者の同意なく結果を提供してはならないこととなります。
A20 個々の労働者の結果であることが識別できないよう加工した集団的なデータであれば、労働者の同意なく、事業者に提供することは可能です。ただし、集団の単位が小さいなど、集団的なデータであっても個人が識別できるような場合には、労働者の同意なく、事業者に提供することはできません。
なお、職場の集団的なストレス分析の具体的な方法などについては、今後、指針などでお示しする予定です。
A21 ストレスチェックの結果の保存は、ストレスチェックの実施者において行うことを想定していますが、具体的な保存方法などについては、今後労使や専門家の意見も聴きつつ検討を行い、お示しする予定です。
A22 ストレスチェックの実施状況を把握するため、事業者には、労働基準監督署にその実施状況について報告していただく仕組みを設けることを考えています。
具体的には、今後、労使や専門家のご意見を聴きつつ省令で定めることにしています。
A23 健康診断とストレスチェックは、いずれも労働者の健康の状況を把握するためのものであるという観点では、重複した概念となっています。両者を事業者の義務とする場合に、義務が一部重複することになるため、法技術的な観点からその重複を避けるため法第66条1項の「健康診断」から「第66条の10第1項の検査」(=ストレスチェック)を除く改正を行ったものです。
なお、これにより、健康診断とストレスチェックを同時に行うことを否定するものではありません。(A16参照)
A24 面接指導は、問診その他の方法により心身の状況を把握し、これに応じて面接により必要な指導を行うもので、これに基づき必要な措置が行われることになります。
具体的な実施方法などについては、今後、労使や専門家のご意見を聴きつつ省令で定めることにしています。
A25 A24のとおり、面接指導は問診その他の方法により労働者の心身の状況を把握し、面接により必要な指導を行うものであるため、医学的な知見を有する医師でなければ実施することができない仕組みとしています。
A26 面接指導は、労働者の申出に基づくものであり、面接指導の結果、事業者は、必要に応じて労働者の健康を確保するため就業上の措置を講じなければならないため、面接指導を実施した医師からその結果を入手することとなっており、労働者の同意なく、その結果を把握することができます。
A27 不利益な取扱いとしては、例えば、面接指導の申出の後に、当該申出があったことを理由として解雇、減給、降格、不利益な配置の転換等がされた場合などが考えられます。具体的には、今後、労使や専門家のご意見を聴きつつ検討を行い、不適当と考えられる事例を指針等で示すことを予定しています。
A28 面接指導を実施した医師から、面接指導の結果報告に併せて意見を聴取することが適当です。また、面接指導を実施した医師が、当該面接指導を受けた労働者の所属する事業場で選任されている産業医でない場合には、面接指導を実施した医師からの意見聴取と併せて、当該事業場で選任されている産業医の意見を聴取することも考えられます。
A29 今後、具体的に検討する予定ですが、現時点では、@ストレスチェックの実施頻度として、現行の一般健康診断と同様に、1年以内ごとに1回以上実施すること、A今後、専門家等のご意見を踏まえて検討することとしている、ストレスチェックの項目の考え方などを定めることを考えています。
A30 今後、具体的に検討する予定ですが、現時点では、ストレスチェックを行った医師、保健師等からの結果の通知は、検査が行われた後、遅滞なく行わなければならないことなどを定めることを考えています。
A31 いずれも、今後、具体的に検討する予定ですが、現時点では、「厚生労働省令で定める要件」としては、ストレスチェックの結果、高ストレスと評価された労働者であることなどを定めることを考えています。また、「厚生労働省令で定めるところ」としては、@労働者からの申出があった後、遅滞なく面接指導を行わなければならないこと、A労働者の勤務の状況等、面接指導において医師が確認すべき事項などについて定めることを考えています。
A32 今後、具体的に検討する予定ですが、現時点では、面接指導の結果の記録を作成して、これを5年間保存することなどを定めることを考えています。
A33 今後、具体的に検討する予定ですが、現時点では、医師からの意見聴取は、面接指導が行われた後、遅滞なく行わなければならないこと等を定めることなどを定めることを考えています。
A34 面接指導の結果及び医師の意見を踏まえ、事業者が講ずべき労働者の健康を保持するために必要な措置の適切かつ有効な実施を図るため、必要な内容を盛り込む予定です。具体的には、医師からの意見聴取の方法、就業上の措置の区分とその決定方法、面接指導の結果に基づく不合理な不利益取扱いの考え方などについて定めることとしていますが、詳細は、今後、労使や専門家のご意見を聴きつつ、検討を行っていきます。
A35 ストレスチェックが適切に実施されるよう、来年度以降、医師等に対する研修を実施することとしています。研修の内容等は今後具体的に検討する予定です。
A36 今回のストレスチェック制度は、労働者のメンタルヘルスに関する情報という、極めて機微性の高いものを取り扱うこと、既にメンタルヘルス不調で治療を受けている者にとっては、ストレスチェックを受けなければならいないこと自体が精神的負担を与えるおそれもあることから、希望しない労働者にまで一律に義務付けることは適当でないとの御意見を踏まえ、労働者がストレスチェックを受ける義務の規定を設けないこととしたものです。
A1 新制度は、死亡災害などの重大な労働災害を複数の事業場で繰り返す企業が散見されることから、そうした企業に、企業全体で着実に改善を図らせ、再発防止を期するために設けるものです。
なお、この制度は、第12次労働災害防止計画において、「法令違反により重大な労働災害を繰り返して発生させたような企業について、一定の基準を設け、着実に労働環境の改善を図らせる」とされたことを踏まえ、労働政策審議会安全衛生分科会においてご議論いただいた結果、設けることが適当とされたものです。
A2 新制度の要件に該当する企業については、新制度による対応を行うことになりますが、それ以外には、基本的に、現行の安全衛生改善計画制度の運用に変更はありません。
A3 今後、具体的に検討する予定ですが、現時点では、例えば、死亡災害、障害等級第1級〜第7級に相当する労働災害を想定しています。
A4 重大な労働災害に何が該当するかについては、今後労働政策審議会安全衛生分科会で具体的な検討がなされることから、重大な労働災害を繰り返す企業の数について現時点でお示しすることはできませんが、仮に死亡災害に限定するとすれば、平成21年〜23年の3年間で同様の死亡災害を複数の事業場で繰り返し発生させた企業の数は20社程度です。
新制度では、事業者が、厚生労働大臣の勧告に従わなかった場合にその旨を公表することとされているため、現時点では、どのくらいの企業が公表の対象になるかは明確にお答えすることは困難です。
A5 労働政策審議会安全衛生分科会では、「重大な労働災害の再発を防止するため必要があると認める場合」について、3年間で同様の重大な労働災害を複数の事業場で発生させた場合を対象としてはどうかという議論が行われたところであり、このような議論を踏まえ、今後具体的に検討していく予定です。
A6 関係する全ての事業場の労働者に計画の遵守義務がかかることとなるため、何らかの方法で関係する全ての事業場の過半数の労働者を代表する意見を聴いていただく必要があると考えていますが、具体的な意見の聴取方法については、労働時間等設定改善委員会の例(※)などを参考に、今後検討していく予定です。
(※)労働時間等設定改善委員会は、事業主代表と労働者代表を構成員とし、労働時間等の設定の改善に関する事項を調査審議し、事業主に対し意見を述べることを目的として、全部の事業場を通じて一の委員会又は事業場ごとの委員会を設置することとされています。委員の半数は、過半数労働組合又は過半数代表者の推薦に基づいて指名されています。
A7 今後、具体的に検討する予定ですが、現時点では、計画作成指示書の様式、計画に記載すべき事項などについて定める予定です。
A8 今後、具体的に検討する予定ですが、現時点では、計画作成指示書の様式などを定める予定です。
A9 勧告は、特別安全衛生改善計画の作成指示等に従わない場合に、労働災害の再発を防止するための次の段階の措置として位置づけています。
具体的には、特別安全衛生改善計画の作成又は変更指示をしたにもかかわらず、事業者がその指示に従わない場合に、労働災害の再発を防止するために必要な措置をとるよう勧告を行うとともに、事業者が策定した計画を実施していないことが確認された場合には、実施するよう勧告を行うことを考えています。
A10 具体的には、今後、検討していく予定ですが、少なくとも、対象となる企業の名称や、公表に至った事由(厚生労働大臣の勧告に従っていない旨など)は公表する内容に含まれることになると考えています。